映画「のぼうの城」を観てきたでござる

劣勢と思われている者が強者に打ち勝つ、これほど痛快なことはないですね。しかも中心人物が人々から無能扱いされているならなおさらです。この「のぼうの城」もそういう物語です。

忍城の城主・成田氏長の従兄弟である成田長親は農民の手伝いなどをして人々から慕われていましたが、不器用であるため「のぼう様」(でくのぼう)と呼ばれていました。そんな長親でしたが、城代となった父親の泰季が亡くなったため、代わりに城代となり豊臣側の石田三成を総大将とした2万の大軍を3千程度の手勢で立ち向かうこととなります。

長親は特別な才能はないのですが、人々に慕われる人望があります。そのため優れた武将に助けられ、さらに農民でさえも戦を決意したのが長親と知って共に戦うことを決め、一丸となって豊臣側の大軍を退けます。

長親はやったことと言えば田楽踊りだけなのですが、これを機に長親を慕っていた人々が一つとなりその後の戦況を変えるきっかけとなったところが見所の一つですね。それと最後の石田三成との開城条件の交渉の場はそれまでと打って変わって毅然とした態度でカッコよかったですね。しかし好意をもってくれた甲斐姫をあっさりと渡してしまうのには悲哀を感じました。そんな長親役は野村萬斎さんだからこそできたのだと思います。

石田三成が軍使として「強いものには弱く、弱いものには強く出る」長束正家を起用し、降伏するつもりだった成田側を挑発させ、戦に転じさせるところが巧くてニヤリとさせられましたね。演じた上地雄輔さんも意外と良かったです。

柴崎和泉守役のDonDokoDon山口さんの演技はオーバーでデフォルメ気味なのですが、戦うシーンになると一騎当千で相手を打ち負かし、豪快で見ごたえがありますね。そして正木丹波守利英役の佐藤浩市さんが単騎で戦うのもカッコよかったです。この人がいたからこそ重みが出て長親が際立ったのだと思います。

史実を基にしたと謳っていますが、忍城の戦いの史料はあまりないそうなので、確かなところは「豊臣側2万の大軍に対して3千程度で挑み、水攻めを受けながらも小田原城が落城するまで抵抗を続けた」ということだけだそうです。だから人物像とかも創作らしいです。よって長親もみんなから慕われていたというのも不明らしいです。しかし2万の軍勢を3千で対抗したという事実だけで書き手としては創作のしがいがあったでしょうね。

堅苦しい時代劇のイメージは全くないですね。言葉遣いも現代っぽく砕けてるし、出演者もテレビでよく見る人たちだし、娯楽映画として楽しめる作品だと思います。

まだ観ていない方もこのお正月に映画館に足を運び、ポップコーンをほうばりながら観てはいかがでしょうか。

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