今夏から富士登山において、山梨県および静岡県はそれぞれ通行料・入山料として4,000円を徴収することを決定いたしました。この入山料徴収の背景には、外国人登山者の急増に伴う混雑や「弾丸登山」の問題、そして登山道の整備や環境保全にかかる費用などがあります。両県は2014年より、任意での保全協力金1,000円の徴収を開始しておりました。山梨県においては、2024年から通行料2,000円の支払いを義務付けています。そして2025年からは、山梨・静岡両県がそれぞれ通行料・入山料の徴収を義務化することで足並みを揃え、利用者負担を徹底する運びとなりました。山梨県は、この通行料収入を富士山の安全対策強化に充てる方針を表明しております。
また、冬季閉山期間中の富士山における遭難事故が多発していることを受け、山梨県と静岡県は、防災ヘリコプターによる救助の有料化を検討している状況です。この背景には、安易な登山による遭難者を公費で救助することに対し、富士山麓の周辺自治体から疑問の声が上がっていることがあります。両県は、救助費用の自己負担を義務付けることで、安易な登山を抑制したい考えです。しかしながら、総務省消防庁と警察庁は5月27日の参議院総務委員会で、この救助有料化には課題が多く、慎重な検討が必要であるとの見解を示しています。
山岳救助は、主に警察の山岳警備隊や消防の山岳救助隊といった公的な組織によって行われています。これらの公的機関が捜索・救助活動にあたる場合、通常は費用が発生しません。しかし、一部の自治体では救助の有料化が進んでいます。例えば、埼玉県では2018年に全国で初めて、自治体ヘリコプターによる山岳救助を有料化する条例が施行されました。実際にこの条例が適用された事例もあります。山中で遭難した60代の男性をヘリコプターで救助した際、約1時間の飛行にかかった燃料費として5万5,000円が請求されました。
公的機関による救助だけでなく、民間の組織に協力を依頼して捜索活動にあたるケースも少なくありません。民間の山岳会に協力を依頼した場合、1日1人あたり2万円から3万円程度の費用が発生するのが一般的です。また、民間のヘリコプターを使用する場合の費用は業者によって大きく異なりますが、例えば1日3時間飛行したと仮定すると、燃料費などを含めて約150万円前後に及ぶこともあります。これらの費用は、原則として遭難者本人に請求されることになります。
山岳遭難の発生件数は、コロナ禍の一時期を除き、年々増加傾向にあります。警察庁のデータによると、2023年の山岳遭難は以下の通りです。
発生件数: 3,126件(前年比 +111件)
遭難者数: 3,568人(前年比 +62人)
うち死者・行方不明者: 335人(前年比 +8人)
負傷者: 1,400人(前年比 +94人)
無事救助者: 1,833人(前年比 -40人)
都道府県別に見ると、山岳遭難の発生が最も多いのは長野県(302件)で、次いで東京都(214件)、北海道(212件)となっています。
2023年のデータを見ると、山岳遭難者が最も多かったのは意外にも高尾山で、その数は133人に上ります。これは、富士山(97人)を上回る数字です。標高599メートルの低山である高尾山が、日本で最も遭難者が多い山となっているのは特筆すべき点です。実際、高尾山の4号路では滑落事故がたびたび発生し、死亡者も出ています。ミシュランの三つ星を獲得して登山者が急増したことで、「誰でも気軽に登れる山」というイメージが定着しました。しかし、このイメージが、登山前の準備不足や体力不足を軽視させることにつながり、結果として遭難を招いているのかもしれません。
遭難対策において最も重要なのは、登山計画書の作成です。計画書を作成する過程で自身の計画を客観的に見つめ直すことで、「ルートに無理はないか」「装備に不足はないか」といった点を事前に確認でき、準備段階からリスクを軽減できます。
さらに、登山届を提出することも非常に重要です。登山者の緊急連絡先、行動範囲や予定時間、所持品や装備といった情報が第三者に共有されるため、万が一の際に迅速な救助活動に繋がります。インターネットで登山届を提出できるサービスとして、「YAMAP」や「山と自然ネットワーク コンパス」があります。これらのサービスはすべての自治体に対応しているわけではありませんが、例えば警視庁は「山と自然ネットワーク コンパス」と連携しているため、東京都内で登山をする場合に利用できます。
万が一の遭難に備え、山岳保険への加入は非常に重要です。山岳保険は、遭難時の捜索費用はもちろん、登山中に他者に損害を与えてしまった場合の賠償費用なども補償してくれます。一般的な生命保険や損害保険では登山中のトラブルが補償されないことが多いため、もし救助ヘリが出動するような事態になれば、高額な費用負担が発生する可能性もあるため、必ず加入を検討しましょう。
また、保険とは異なり、捜索・救助を行う「役務提供型」のサービスとして、民間で唯一ヘリコプターによる捜索サービスを提供しているのが「ココヘリ」です。これは、山岳遭難時に捜索ヘリが早期に遭難者の居場所を特定し、救助組織に伝えるサービスです。「ココヘリ」の会員には専用の電波を発信する発信機が貸与され、山岳遭難時には受信機でその電波を受信し、遭難者の位置を特定します。「ココヘリ」を運営する「AUTHENTIC JAPAN」は、埼玉県警と「山岳遭難時の捜索活動に関する連携協定」を締結しており、その信頼性も高いと言えるでしょう。
救助ヘリの出動は常に危険と隣り合わせであり、救助隊員が命を落とすケースも少なくありません。そのため、安易な登山による遭難を減らしていくことが、登山者と救助に携わる方々の双方にとって非常に大切です。
それでは今回も多摩地域のニュースを見ていきます。
- 東京都 夏以降4か月間に限定 水道基本料金無償とする方針
- キッチンカー災害時に一役 避難者の食支援期待 小平市が連携協定
- 日野市 所有者不明の空き家を解消へ… 都内初・新制度で売却
- 多摩市 宿泊施設の誘致強化へ 相次ぐ閉館受け
- 「三鷹データセンターEAST」の電力を実質再エネ100%に転換
- 街の住みここちランキング2025<首都圏版>ランキング発表
- 立川の小学校襲撃、児童守ったマニュアルと「不審者侵入訓練」
- PFAS汚染水で横田基地に初の立ち入り調査
- 横田基地のPFAS汚染水、浄化して基地外に放流か
- 多摩のPFAS汚染、水道水源の井戸4つ新たに取水停止
- 自民党、東京都連でも「裏金」疑惑
- 「ポスター枠が不足」選挙無効を求めた原告の敗訴が確定
- 6月以降のイベント・ピックアップ
- 編集後記
東京都 夏以降4か月間に限定 水道基本料金無償とする方針
東京都は、物価高による家計の負担を軽減しようとことしの夏以降に限った臨時的な措置として水道の基本料金を無償とする方針を決めました。今回の事業では検針の時期によって、6月から9月、または7月から10月の4か月間、都内すべての一般家庭の水道の基本料金が無償になります。
また、都水道局が管轄していない武蔵野市、昭島市、羽村市、檜原村、それに島しょ部については、取り組みを行う自治体に対し、基本料金の相当額を交付するということです。都は、物価高による家計の負担を軽減し、その分、エアコンの使用を促して熱中症対策につなげることを目的としています。
補正予算で対応。
キッチンカー災害時に一役 避難者の食支援期待 小平市が連携協定
キッチンカー災害時に一役 避難者の食支援期待 小平市が連携協定
小平市は今月8日、約700の事業者でつくる「日本キッチンカー経営審議会」との連携協定を締結した。災害時に市が要請して避難所などでキッチンカーによる炊き出しを実施するという協定。同審議会は、小平市のほかにも、都内の自治体では江戸川区や荒川区など5区と協定を結んでいるという。
水道や電気のライフラインが断たれた被災地に、まとまった量の食事を速やかに届けられるのが、キッチンカーの強み。
日野市 所有者不明の空き家を解消へ… 都内初・新制度で売却
23年4月に施行された改正民法で、「所有者不明土地・建物管理命令」制度が新設された。この制度に基づき、自治体などが所有者不明の土地・建物の管理や処分のために裁判所へ申し立てると、裁判所から選任された管理人が土地や建物の売却などをできるようになった。
日野市によると、自治体が同制度に基づいて申し立てを行い、所有者不明の不動産が売却されたのは都内で初のケースだったという。
多摩市 宿泊施設の誘致強化へ 相次ぐ閉館受け
多摩市はこのほど、市内にあるビジネスや観光などを目的としたホテルの減少を受け、市内宿泊施設の誘致強化策を打ち出した。条例を改正し、客室数などに応じて事業者に支払う最大1億5千万円の奨励金交付期間の10年間への延長や、常用雇用者数の下限引き下げなどを行う。
「三鷹データセンターEAST」の電力を実質再エネ100%に転換
NTTデータグループ、「三鷹データセンターEAST」の電力を実質再エネ100%に転換
株式会社NTTデータグループは23日、同社が保有する三鷹データセンターEASの使用電力を、2025年度中に実質的な再生可能エネルギー100%に転換すると発表した。実現に向けては、東京電力エナジーパートナー株式会社が提供する生グリーン電力を、三鷹EASTの電力の一部として導入する。
また、NTTデータグループが保有する国内13拠点全てのデータセンターにおいても、自社が使用する電力を再エネ100%に転換し、Scope2の温室効果ガス排出量実質ゼロを2025年度中に達成すると説明。
街の住みここちランキング2025<首都圏版>ランキング発表
住みここち(駅)ランキングの18位に井の頭公園(京王井の頭線)、56位に八王子みなみ野(JR横浜線)、57位に吉祥寺(JR中央線)。
住みここち(自治体)ランキング3位に武蔵野市、13位に国立市、16位に三鷹市。
武蔵野市については井の頭恩賜公園など各所に自然がある一方、渋谷や新宿に約20分で行けるなど、多様な魅力のある街と評価されている。
立川の小学校襲撃、児童守ったマニュアルと「不審者侵入訓練」
立川の小学校襲撃、児童守ったマニュアルと「不審者侵入訓練」…教職員は連係・さすまたも駆使
市教委によると、同小では文部科学省の手引に基づき、不審者対応や避難誘導の手順などを定めた防犯マニュアルを策定。年1回、訓練を行っており、昨年8月には、不審者が2階の教室に侵入したとの想定で実施していた。
今回の事件を受け、都教委は8日、区市町村や都立学校に、門扉の施錠や不審者侵入に備えた訓練の徹底を呼びかける通知を出した。
PFAS汚染水で横田基地に初の立ち入り調査
PFAS汚染水で横田基地に初の立ち入り調査 国や都、周辺自治体 貯水池の濃度測定へサンプル採取
日本政府と都、基地周辺6市町が14日午後、基地内へ立ち入り調査に入った。政府と自治体は汚染水が漏れ出た貯水池のPFAS濃度を調べる予定。在日米軍施設への立ち入り権を明記した日米地位協定の環境補足協定に基づく調査で、横田基地では初めてとなる。
米軍は、装置で浄化した水の濃度が国の暫定目標値である1リットル当たり50ナノグラム未満であることを確認し、浄化した水を雨水排水路を通じ放流。水は、基地南西部から基地外に流れ出るとした。
横田基地のPFAS汚染水、浄化して基地外に放流か
横田基地のPFAS汚染水、浄化して基地外に放流か 「焼却が唯一の処分方法」から米軍が転換したワケ
国が30日、基地内の貯水池に残る汚染水のPFAS濃度を浄化装置で低減できたことを確認し、排水路から基地外に放流すると発表した。
防衛省と都、在日米軍の3者でそれぞれ検査し、防衛省と都はPFASの一種PFOSとPFOAが1リットル当たり2ナノグラム未満、在日米軍はPFOSが4ナノグラム、PFOAが2ナノグラム未満だった。
多摩のPFAS汚染、水道水源の井戸4つ新たに取水停止
【一覧あり】多摩のPFAS汚染、水道水源の井戸4つ新たに取水停止 調布・国分寺など7市で計44カ所に
調布市などの井戸から高濃度のPFASが検出されたとして、東京都水道局が新たに4カ所で取水を止めていることが分かった。PFASの影響で取水停止している都水道局の井戸は44カ所に増えた。
都水道局が多摩地域で水道水源として管理する井戸は277カ所で、PFASの影響での停止は16%。停止の井戸があるのは立川、国分寺、国立、小平、府中、調布、西東京の7市の浄水施設。
自民党、東京都連でも「裏金」疑惑
自民党、東京都連でも「裏金」疑惑 パーティー券収入の一部が収支報告書に記載なしか 都議らに内部調査
東京・永田町にある自民党東京都支部連合会(都連)の政治資金パーティー収入の一部が、政治資金収支報告書に記載されていない疑いがあることが分かった。
東京都議会の自民会派でつくる政治団体「都議会自民党」で発覚した裏金づくりと同じ手口の不正が、都連にも存在していた疑いが浮上。
国会議員の派閥、東京都議会に続き、自民党では東京都支部連合会(都連)でも裏金が存在する疑いが浮上した。
「ポスター枠が不足」選挙無効を求めた原告の敗訴が確定
「ポスター枠が不足」選挙無効を求めた原告の敗訴が確定 立候補者が乱立した2024年東京都知事選挙
昨年7月の東京都知事選で56人が出馬したのにポスター掲示板に48枠しか用意されなかったのは都選挙管理委員会の落ち度で、公選法に違反するとして、立候補した河合悠祐氏が選挙無効を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(三浦守裁判長)は、河合氏の上告を受理しない決定をした。選挙の公平性を害したとは言えないとして、請求を退けた東京高裁判決が確定した。
6月以降のイベント・ピックアップ
日本ダービー
6月1日(日) 15:40@東京競馬場
安田記念
6月8日(日) 15:40@東京競馬場
八王子魂 Festival & Carnival 2025
6月14日(土)-15日(日)@エスフォルタアリーナ八王子
ヒロミ、KICK THE CAN CREW、、FUNKY MONKEY BΛBY’S、氣志團、湘南乃風など。
桜桃忌
6月19日@禅林寺
太宰治の遺体が発見された6月19日は「桜桃忌」と名づけられ、墓所のある禅林寺にはいまも毎年多くの太宰ファンが参拝に訪れています。
編集後記
25日に府中市の東京競馬場で行われたオークスは4番人気のカムニャックが勝利しました。桜花賞を制したエンブロイダリーは血統的にマイラーということもあってか9着でした。
6月1日にはついに日本ダービーが開催されます。皐月賞を制したミュージアムマイルが2冠となるか、クロワデュノールのリベンジなるか。意外にミュージアムマイルの人気が低いので美味しいかも。
それでは!
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